不公平な価格設定?ダイナミックプライシングとその事例

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記事に入る前に一言

「ダイナミックプライシング」は企業の利益最大化に適したプライシング方法の一つです。しかし、その裏には消費者にとっての「不公平性」という問題も潜んでいます。この記事では導入事例などを紹介しながら、ダイナミックプライシングの導入是非について考えていきます。

目次

ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングの定義と目的

ダイナミックプライシングは、需要と供給に応じて価格をリアルタイムで変動させる価格設定の手法です。

私たちの生活の周りだと航空券やホテル料金など、需要が変動しやすいサービス業界で多く使われています。
航空券やホテルの予約を取ろうとすると、日にちによって価格が違うという経験をされた方は多いと思います。


この手法により、企業は利益を最大化し、消費者も適切な価格で商品やサービスを購入できる可能性があります。

一方で、電気、水道、ガスなどの公共料金、政府や地方自治体によって厳しく管理されています。これらライフラインの価格変動は消費者の生活に直接大きな影響を与えるためです。病院の医療費や教育費の授業料なども安定した価格設定が求められ、ダイナミックプライシングとは親和性がありません。

用語解説:ライフライン

都市生活の維持に必要不可欠な、電気・ガス・水道・通信・輸送などをいう語。多く、地震対策との関連で取り上げられる。生命線。

出典:デジタル大辞泉

ライト

夏場のエアコンはライフラインの一部になっていますが、もしも電気代がダイナミックプライシングであった場合、電気代は青天井になってしまいます。

ダイナミックプライシングに親和性のある業界

ダイナミックプライシングに親和性のある業界は具体的に以下の通りです。

1. 航空業界

航空券の需要は季節、曜日、時間帯、特別なイベントなどに大きく左右されます。空席の状況や予約のタイミングに応じて価格を変動させることで、航空会社は収益を最大化し、フライトの座席を効率的に埋めることができます。

シーズンによって異なるANAの必要マイルチャート

2. ホテル業界

ホテルの客室は、特定のイベント、観光シーズン、週末や平日などの要因で需要が変動します。リアルタイムで価格を調整することで、ホテルは客室の稼働率を最適化し、利益を最大化することが可能です。

要約幼児

アパホテルはダイナミックプライシングを上手に取り入れた成功事例だね。

3. 小売業界

特定の商品やカテゴリーの需要が季節やトレンドにより変動します。例えば、ファッション小売業では、季節の変わり目やセール期間中に価格を調整することで、在庫管理と収益最大化を図ります。

ユニクロなどで季節外れのスウェットやセーターなどが安く売られていたりするのも在庫管理を目的としたダイナミックプライシングの一例です。

4. レンタカー業界

レンタカーの需要も季節や場所、特別なイベントによって変動します。価格をリアルタイムで調整することで、レンタカー会社は車両の利用率を高め、収益を最大化できます。

5. スポーツ・エンターテイメント業界

コンサートやスポーツイベントのチケット価格は、試合や公演の日程、人気度、座席の場所、予約のタイミングなどに応じて変動します。人気イベントほどチケット価格が上がるため、イベント主催者は収益を最大化できます。

6. eコマース業界

オンラインショッピングでは、リアルタイムの需要データや競合他社の価格を監視しながら、価格を柔軟に変更できます。これにより、消費者の購入意欲を高め、他社に対する競争力を維持することができます。

ダイナミックプライシングと親和性のある業界は総じて需要と供給の変動が顕著であり、ダイナミックプライシングを導入することによって収益を最大化し、在庫管理など資源を効率的に活用することが可能になります。

ダイナミックプライシングにおける値段設定の要素

ダイナミックプライシングを効果的に行うためには、以下の要素を検討して価格設定する必要があります:

  • 需要の予測:過去のデータや市場の動向を分析して、需要を予測します。
  • 競合の価格:競合他社の価格動向をリアルタイムで監視し、自社の価格を調整します。
  • 消費者の行動:消費者の購買履歴や行動パターンを分析して、最適な価格を設定します。

AIや機械学習を活用することで、これらの要素を統合し、リアルタイムで最適な価格を提供することが可能です。

ダイナミックプライシングの成功事例

東京ディズニーリゾートの価格戦略

ダイナミックプライシングの成功事例として東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドがあげられるでしょう。
東京ディズニーリゾートは2020年に新型コロナウイルスの影響もあり入園者数が756万人まで落ち込みましたが、2023年度は2750万人まで入園者数を戻し、毎年右肩上がりで入園者数は回復しつつあります。

そんなディズニーのパークチケットは平日と土日で価格に2,000円もの差があります。東京ディズニーリゾートは需要の高い土日のパークチケットを平日より2,000円高くすることでゲスト1⼈当たり売上⾼を増加させることに成功しました。

東京ディズニーリゾートのチケット予約画面


株式会社オリエンタルランドの決算説明会資料によると、2023年3月期は売上高4,831億円で、その翌年の2024年3月期の実売上高は6,184億円でした。ダイナミックプライシングを導入している東京ディズニーリゾートは一年で売上高が28.0%も増加していました。


実際、2024年3月期の決算説明会には「変動価格制による⾼価格帯チケットの構成⽐の増」としてダイナミックプライシングの売上に与えた効果についても触れられています。

株式会社オリエンタルランド 2024年3月期 決算説明会資料より引用

まとめ

ダイナミックプライシングは、企業にとって利益を最大化するための強力なツールです。需要と供給の変動が顕著であり、在庫管理や空室対策に苦慮している場合はダイナミックプライシングの導入を検討してみるのも一つの方法です。


しかし、短期間で価格の上下が大きすぎる場合、消費者は同じ商品やサービスを購入しているはずなのに値段が大きく異なることに対して不公平感を感じ、顧客離れに繋がるリスクもあります。

ダイナミックプライシングを導入するには適切なデータ分析とアルゴリズムの導入、提供する製品やサービスの質向上などにより、顧客満足度損なわないように収益性を上げていくことが重要になります。

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