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ライト
働き盛りの30代で東証プライムの上場企業から中小企業まで数多くの企業との商談経験を持つ。サラリーマンとして会社に勤務する傍ら、自身の知識や経験、学びをアウトプットする目的で本ブログを開設。
『企業が書かない』×『社会人に役立つ』そんなビジネスコラムを記事にします。
「もっと売りたい。でも、押し売りにはなりたくない。」
そんな葛藤を抱えている営業マンは多いのではないでしょうか。顧客に寄り添いながら、売上もきちんと上げていく。その両立を目指す上で非常に重要なのが、アップセルとクロスセルという営業手法です。

本記事では、それぞれの意味や効果的な使い方に加えて、心理学の観点から注目される「テンション・リダクション効果」についても解説。実践的なトーク例も紹介しながら、売上アップにつながる考え方と対応方法を紹介します。
アップセルとは?


アップセル(Upsell)とは、顧客に対して、より高価な上位プランや上位モデルを提案する営業手法です。すでに購入意欲がある顧客に対して「より魅力的で高価な選択肢」を提示することで、顧客満足度と売上を同時に高めることができます。
アップセルの具体例
- 標準プラン → プレミアムプランへの切り替え提案
- 基本モデルの製品 → 拡張機能付きの上位モデル
- 従量課金契約 → 年間契約への移行(長期的な視点から見た価格メリットを提示)
アップセルのポイントは、「この人ならもう少し費用を払ってもより便利なプランを求めているかもしれない」と見極める観察力です。相手の課題や目的に応じて、的確にメリットとデメリットを伝えることが求められます。
人はそもそも中庸を求める性質があるということを理解した上で、丁寧に相手のニーズを拾い上げていくことがアップセルを上手におこなうコツです。


クロスセルとは?


クロスセル(Cross-sell)とは、顧客が購入を決めた商品やサービスに対して、関連性のある別の商品・サービスを追加で提案する営業手法です。
クロスセルの具体例
- ソフトウェア導入 → 初期設定サポートや操作研修の提案
- 複合機販売 → 消耗品の定期配送サービスの提案
- 保険契約 → 家族向けプランの追加提案
クロスセルは「売上を上げるため」というよりも、「一緒に契約(購入)すると便利だから提案する」という相手視点に立って提案する意識が重要です。
クロスセル提案には「テンション・リダクション効果」を活かせ!
心理学におけるテンション・リダクション効果(Tension Reduction Effect)とは、大きな意思決定をした直後、人は安心感から気が緩みやすくなり、追加提案への心理的ハードルが下がるという現象です。
たとえば、顧客が商品やサービスの契約を決めた直後は、「決断した」という解放感があります。このタイミングで「実は多くの方が併せてご利用されている〇〇もご紹介しておきますね」とさりげなく提案すると、通常よりも受け入れられやすくなります。
これは「売り込み」ではなく、「役に立つ情報提供」の延長線として自然に組み込むのがポイントです。



私たちの身の回りでは、家電製品に対する延長保証サービスの提案や付属のアクセサリーなどの販売がクロスセルに該当します。
アップセル・クロスセルが売上の最大化に有効な理由
- 既存顧客への提案は新規開拓より成約率が高い
-
すでに信頼関係が構築されているので、ニーズにマッチした提案であれば前向きに検討されやすい。
- 顧客満足度の向上に直結
-
本当に必要なオプションや関連サービスをセットで導入できれば、導入後の顧客満足度も向上します。
- リピートや他顧客紹介につながる
-
アップセル・クロスセルの提案を適切に盛り込むことができれば「あの担当営業が丁寧にサービス紹介をしれくれた」と記憶に残りやすく、信頼関係が強化される。
アップセル・クロスセルの提案トーク例


アップセル・クロスセルを提案する際、最も避けたいのは「この営業は売上やノルマのために提案している」と思われることです。提案に少しでも不信感を持たれるとアップセルもクロスセルも受け入れられにくくなります。押し売りに聞こえない自然で納得感のあるトークを意識しましょう。
アップセルのトーク例
「◯◯のご用途であれば、実はこちらの上位プランの方が、結果的にコストパフォーマンスが高くなるケースが多いんです。エントリープランでお申し込みされた方も最終的にこちらの上位プランに切り替える方が多数いらっしゃいます。」
クロスセルのトーク例
「他の企業様では、導入時に◯◯のサポートも併せてご利用されるケースが多く、スムーズな定着に役立っています。必要に応じてこちらもご案内できますが、いかがでしょうか?」


提案のタイミングと信頼関係の築き方
アップセルやクロスセルは、提案するタイミングが非常に重要です。
- 導入が決まり、テンション・リダクション効果が働く瞬間
- フォロー面談や活用状況のヒアリングの場
日頃から小さな要望や不安に真摯な対応をしておくことで、顧客の中に「この人の話なら聞いても良いかな」という信頼が蓄積されていきます。信頼があるからこそ、追加提案にも耳を傾けてもらえるのです。


まとめ
アップセル・クロスセルは、単なる“売上のための提案”ではなく、“顧客により良い選択肢を提示する手段”です。テンション・リダクション効果も理解し、自然な流れで提案を行えば、顧客に負担を感じさせることなく、納得感のあるクロージングが可能になります。
営業活動に心理学的な視点を取り入れながら、「顧客の成功」を第一に考えた提案を心がけましょう。それが、あなたの売上と信頼の両方を高める近道になります。