価格表示の工夫で売上が激変?アンカリング効果とは

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ライト

上場企業勤務/法人営業の30代サラリーマン

働き盛りの30代で東証プライムの上場企業から中小企業まで数多くの企業との商談経験を持つ。サラリーマンとして会社に勤務する傍ら、自身の知識や経験、学びをアウトプットする目的で本ブログを開設。

『企業が書かない』×『社会人に役立つ』そんなビジネスコラムを記事にします。

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記事に入る前に一言

私たちは、日常のあらゆる場面で知らず知らずのうちに「価格」と「コンテクスト(前後文脈)」によって判断を左右されています。これは単なる偶然ではなく、心理的な効果が働いているのです。その代表が「アンカリング効果」です。この記事では、アンカリング効果の仕組みや実生活での例、そしてビジネスでの活用方法をご紹介します。

目次

アンカリング効果とは

私たちは、日々の買い物や仕事の場面で「この価格は妥当か?」「この商品はお買い得か?」といった判断を繰り返しています。しかし、こうした判断は常に合理的におこなわれているわけではありません。実は私たちの購買行動は最初に目にした数字や情報に強く影響を受けているのです。これを行動経済学では「アンカリング効果(anchoring effect)」と呼びます。

たとえば、「この商品は通常5,000円ですが、本日はセールで3,000円です」と言われると、「3,000円は安い!」と感じやすくなります。これは、最初に提示された“5,000円”が基準(アンカー)になっているためです。

ちなみにアンカリング効果の「アンカー(anchor)」「船のいかり」を意味し、最初に目にした情報が「船のいかり」のようにアンカーの役目を果たします。

用語解説:行動経済学

人間の非合理性に注目し、伝統的な経済学の論理では解明が難しかった事象を実証的に示した学問。従来の経済学が想定する「合理的な人間」ではなく、感情や環境などの要素が行動に影響を及ぼすとの考え方に基づく。ギャンブルで被った損失をギャンブルで回収しようとしたり、経済状況と株式相場がかけ離れた動きをしたりするといった事象を説明した。

出典:共同通信社 共同通信ニュース用語解説

なぜ私たちは最初の情報に引きずられるか?

その理由の一つは、私たちの思考に備わっている「ヒューリスティック(heuristic)」と呼ばれる認知のショートカットです。ヒューリスティックは、判断を素早く行うための簡易的な思考プロセスですが、時にバイアス(偏り)を生みます。アンカリング効果もこの一種で、最初に得た情報が強く記憶に残り、その後の評価に過度に影響を及ぼすのです。

実生活で身近なアンカリング効果の例

アンカリング効果は、私たちの身の回りのあらゆる場面で使われています。以下の例を見ると、あなた自身も無意識のうちに影響を受けていることに気づくかもしれません。

EXAMPLE

元値を残した価格表示「元値:○○円→特価:△△円」

これは代表的なアンカリングの活用例です。実際の販売価格よりも高い“元値”を残しておくことで、“特価”が割安に感じられる仕掛けです。スーパーの半額シールなどもアンカリング効果に該当します。

EXAMPLE

相見積もりで最初の見積もりが基準価格に

アンカリング効果は相見積もりをおこなった状況でも起こり得ます。たとえば、引っ越し費用の予算を8万で設定していたとしても、一社目の見積もりが15万円で二社目の見積もりが10万円だったとしましょう。当初の予算は8万円なので二社とも予算オーバーではありますが、一社目の見積もりが基準価格になるので、二社目の見積もりが随分と安く感じられます。

「私は常に冷静な判断をしているつもり」と思っていても、私たちの意思決定は意外なほどアンカーに左右されているのです。

売上を上げるためにアンカリング効果をビジネスへ活用

アンカリング効果は、ビジネスでも売上や成約率を大きく左右する力を持っています。特に営業・マーケティング分野では、戦略的にこの効果を活用することで、消費者の購買意欲を引き出しやすくなります。

商品価格設定の工夫(松・竹・梅の価格帯)

最上位の“松”をアンカーにすることで、“竹”がもっともコスパよく感じられ、選ばれやすくなります。

初期提示価格(アンカーポイント)を戦略的に活用

最初は高めの価格や提案を提示し、あとから割引や条件変更を提示することで“お得感”を演出する手法は、営業現場でもよく見られます。価格の緩急によって、あとからの提案が「お得」に見える効果が狙えます。

提案資料や営業トークでも「最初に高い数字を出す」テクニック

数字の順序だけで印象が変わる好例です。「通常、他社では年間200万円ほどかかりますが…」から「弊社なら100万円で導入できます」と話すことで、割安に見せることができます。BtoB営業での導入価格や「先にオプションを提示」する手法

最初に提示された基準価格(アンカー)が高ければ高いほど、値引き商品や他の商品との価格差で生じるインパクトは大きくなります。

使い方を誤ると「だまされた」と顧客の信頼を損なうリスクがあります。アンカリング効果を知識として理解しつつ、適正価格での商品展開や提案をおこなう誠実さが求められます。また、基準価格(アンカー)の設定を見誤れば消費者が最初から購買意欲を失うというリスクもあります。

まとめ

  • アンカリング効果は、私たちの意思決定に影響を与える心理効果
  • 日常生活でもビジネスでも、すでに身の回りの多くの場面で活用されてる
  • 購買者の心理を理解し、戦略的に活用することで、提案力や売上の向上が期待できる
  • アンカリング効果は使い方を誤ると信頼を損なうリスクもあるため、「消費者の利益」を優先して考える誠実さが求められる

アンカリング効果を理解し、活かすことで、あなたの営業・マーケティング活動に確かな変化をもたらすことができるはずです。ぜひ身の回りの生活やビジネスの場でアンカリング効果を意識してみてください。

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